こんにちは!
今日は、当社がインターネットでゲットした初仕事についてお
話します。

ある日、国立生理学研究所(愛知県岡崎市)の研究者T氏より
「実験用のラットの頭に装着する小さくて軽いデバイス(装置)
を作ってください。」とのメールによる依頼がありました。

ラットってなあに??から始まったのですが、ratはどぶね
ずみでmouseははつかねずみなんですね。一般にはマウス
はおとなしく清潔で、ラットは獰猛で汚いイメージがあるそう
です。でも、実験に使うラットは無菌状態で育てられているた
め、とても清潔なのだそうです。

メールをいただいて、早速研究所へ伺いました。生理学研究所
は、脳の研究では、世界でも最高レベルの研究が行われている
ところです。すごいところだという知識はありました。
エレベーターで3階まで上がり、ドアが開きました。そこには
なんとも言えない匂いが漂っていました。
少し奥へ進んだところに、T氏の研究室がありました。二部屋
続きで、4畳と6畳くらいの部屋だったと記憶しています。

手前の4畳の部屋には、たくさんのラットがいました。T氏の
部屋だけでなく、階の各部屋には、たくさん飼われていたよう
です。

奥の部屋で、商談が始まりました。T氏は人間の脳を研究する
ために、ラットで実験をされていました。小さなラットの頭蓋
骨を開き、脳に数十ミクロンの太さの電極を刺し込み、脳波の
測定をするのだそうです。説明いただいても???の連続でし
た。刺した電極の位置がずれていた時に、数十ミクロンで場所
を変えることが可能で、XYZ3軸方向に調整でき、ラットが
ストレスを感じないように、1円玉と同じくらいの重さ(1g)
で作って欲しいとのご依頼でした。

設計から製造まですべてを依頼されたのは、この時が始めて
だったので、何とか完成させたいと必死で考えました。
3度ほど、試行錯誤を重ね、試作を繰り返した後、小さな装置
が完成しました。

完成後、5個ほど製品を購入いただきました。
頭蓋骨を開いて、電極を刺し込まれたラットは、ひと月ほどの
寿命です。T氏からラットと一緒に装置を処分するのはもった
いないから、何とか使いまわしができないかと相談を受けました。

できませんと言えば、50個くらいは売れたかもしれません。
でも、開発して製品を売ることに慣れない私は、丁寧に再使用
の方法を伝授しました。まあ、このくそまじめさが私の長所で
あり、短所でもあるんでしょうね。(笑)

T氏は今頃、どこかの国で、私の作った装置を使ってみえるの
かもしれません。T氏のお話では、世界中にT氏と同じような
実験をされている研究者がいるとのことでした。もしかしたら
忘れたころに大量の注文が舞い込むかもしれません。