皆さん、こんにちは!

昨日は、豊川商工会議所で行われました
”航空宇宙産業”への展開に向けた課題と題した講演を伺いました。
講師は、今井航空機工業株式会社の今井哲夫氏でした。

愛知県は、自動車産業の生産拠点の国内分散と
グローバルな生産に移行することでの国内生産量減産に向けて
自動車産業に替わる新産業を模索しています。
その中で、数年前から言われているのが、航空宇宙産業です。

ボーイング社の新機種B787やMRJが製造されることで
新たな仕事が生まれることは確かです。

ところが・・・。
今まで数回にわたり、いろいろなところで伺った”航空産業”は
参入障壁が高く、独特の商習慣があるようです。

まずは、基本となる品質マネジメントシステム。
ISO9001を認証取得されている企業は多いですが
航空宇宙に参入するためには、より厳格な規格である
JIS Q 9100の認証取得が必要となります。

JIS Q 9100とISO9001の最大の違いは
材料の出所から始まり、各加工工程や各種表面処理工程で
より厳格なトレーサビリティが取れていることが要求され
何月何日に、その製品がどの工程にあったかも
いつ問われても回答できるだけの記録を取ることも必須です。
もちろんJIS Q 9100の認証取得にも数百万円の費用がかかります。

さらに、工作機械は、大型で特殊な機械が必要です。
例えば5軸のマシニングセンタでストロークが3m、4mクラスになると
一台1億円を超える投資が必要になります。
マシンのストローク(可動距離)が1m、2mクラスでは
どこの工場にもあり、付加価値の高い仕事を受注することは困難だそうです。

ここまで伺うと・・・。
さらには、一台保有するだけでは、故障した時の保証を問われ
同じタイプの機械を2台ずつ、設備する必要があります。

また、国内の大手企業だけからの仕事に頼っていては
大手企業が受注できなければ、自社も共倒れとなるためにそれを防ぐ必要があります。

というわけで、海外の顧客を開拓しようとすると
部品加工だけでは、受注できず、必ず表面処理も含めた内容となるようです。
ところが、幾つかの処理は、国内には数社しか存在せず
安定して依頼できないそうです。
今井航空機工業では、タイに数億円を投資し、表面処理工場を作られました。

2時間にわたり、いろいろと参考になるお話を伺いました。
ずっと疑問に思っていたことも、幾つかお話いただき、大変参考になりました。

結論から言うと・・・。そんなに投資するお金も時間もないということですが
JIS Q 9100を取得していなくても
三菱重工さんや川崎重工さんからお仕事がいただけるチャンスがあるのだそうです。
それは、数年後にB787やMRJが量産に入り、既存の業者では手が足りなく
なった時です。忙しい時には、過去にもちゃんとした品質保証ができれば
認証取得の有無に関係なく、優秀な企業は、使っていただけたのです。

ただし、忙しいのは、いつも一時のこと。
そのチャンスをうまく生かして
その後も継続してお付き合いすることは厳しいようです。